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集まったボランティアたちに作業の説明をする「まちなじボラセン」の山下祐介さん(中央)=2024年10月20日午前10時9分、石川県輪島市町野町、金居達朗撮影

 この1カ月で、何度、この言葉を耳にしただろう。

 「心が折れそう」

 「心、折れてしまって」

 「もう、心が折れた」

 当然だ、と思う。

 元日の能登半島地震から、一歩ずつ一歩ずつ必死で前に進んできた能登を、9月21日に豪雨が襲った。たった数時間の激しすぎる雨が、これまでの8カ月余りの歩みを一気に振り出しに戻した。

 振り出しよりひどくなったところも数え切れない。

 それでも、動き出した人たちがいる。

 しかも、とりわけ被害の大きかった、石川県輪島市町野町で。

「せめて『雨』の前の状態に」

 豪雨から1週間後の9月28日、町野町の中心部にある市立東陽中学校の体育館に、住民主導の災害ボランティアセンター「まちなじボラセン」が開設された。

 市中心部から車で1時間ほどかかる町野町と南志見(なじみ)地区を対象に、住民からどんな手伝いが必要かを聞きとり、全国から集まったボランティアを派遣する。

 運営するのは、震災後に地元有志が立ち上げた「町野復興プロジェクト実行委員会(町プロ)」。委員長の山下祐介さん(38)は「水害後、『心が折れる』がみんなの口癖、流行語のようになっていた。なんとか、せめて雨の前の状態まで戻したかった」と言う。

 市の社会福祉協議会(社協)もボランティアを募集して派遣しているが、市街地から離れたこの地域にまで目が届きにくい。

 社協は生活再建のため住宅の復旧を重視するが、実際に暮らしを元に近づけるには、住宅の周りの側溝や畑の泥出しも欠かせない。

 山下さんたちは、顔なじみも多い地域の人たちから困りごとを聞き、どんな支援につなげられるかを考える。「間口をすごく広くとる」方針で動き出した。

「千年に1度の地震を、千年に1度のチャンスに」

 町プロは2月に発足した。農家で米粉100%のベーグル店も営む山下さん夫妻や、消防士、医師、看護師、寺の住職、和食料理店主ら、地域の30~50代がメンバーだ。

 高齢化の進む地域では「若者…

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